金沢・能登を訪れて

9月22日(月)から23日(火)の2日間、サポサポprojectのメンバーで石川県金沢・能登を訪れ、支援先や地域の方々との交流を行ってきました。その出会いと気づきをご報告いたします。

「みんなの畑の会」西田さんとの出会い

最初にお会いしたのは、「みんなの畑の会」を主宰されている西田敏明さんでした。ナビで辿り着くと、目の前には竹で組まれたドーム(竹ドーム)が!

ほどなく登場された西田さんは、80歳を目前にしながらも圧倒的なエネルギーを放ち、目の前の課題に力強く挑み続けておられました。経営者として国内外を飛び回った経験を経て、地震前から金沢で地域の要として活動を継続。地震後に移住してきた人々が行政の縦割りによる制度の隙間に取り残される現実に、真正面から向き合い続けています。

行政への不信や諦めではなく、むしろポジティブな姿勢で対話を重ね、一人ひとりの生活を守るため具体的に行動を続ける姿に胸を打たれました。
「悲観するのではなく、一つひとつを解決していくんだ」——その言葉と行動力は、まさに地域を支える希望の光でした。

竹で組まれたドーム「竹ドーム」
竹で組まれたドーム「竹ドーム」の中で西田さんの話に耳を傾けます。
中央が「みんなの畑の会」西田さん。80歳を前にしてもなお前進し続ける姿に圧倒されました。

TOGISOとTOGIZO

その日の夜は、同行メンバーのご縁で志賀町にある古民家を改装した宿「TOGISO」に宿泊しました。目の前には広大な日本海が広がり、波の音と海風に包まれる時間は忘れられない体験となりました。

囲炉裏を囲んでいただいた夕食は、まるで時間がゆっくりと流れるかのように温かく、心に残る交流の場でした。さらに宿の向かいにある「TOGIZO」では、地震で解体される古民家から救い出された輪島塗を蘇らせ、商品として展示・販売。美しく整えられた空間と洗練された展示方法から、新しい復興の姿を感じました。

宿「TOGISO」の前から望んだ日本海の夕焼け
宿「TOGISO」の前から望んだ日本海の夕焼け。波の音とともに心に残る風景。
TOGIZO」の内部。和島塗りが丁寧に美しい
「TOGIZO」の内部。輪島塗りが丁寧に蘇り、美しい展示空間に息を吹き返していました。

輪島市での学びと災害の爪痕

翌23日の午前中には、輪島市を訪れました。私の地元・恵比寿の知人のご主人が経営する「寺田漆器店」を訪問し、輪島塗の制作工程を一部拝見。震災を乗り越えて受け継がれる手仕事の尊さを実感しました。

続いて市内を案内いただくと、つぶれたままの家々、焼け跡に雑草が茂る朝市の跡、大きく露出した水道管が街を横切る光景が目に飛び込んできました。災害の爪痕が色濃く残り、復旧にはどれほどの時間と労力が必要かを肌で感じさせられました。

一方で、各地に点在する復興住宅の姿は印象的でした。東北の震災復興住宅とはまた異なり、新たな工夫や進化が見られ、被災地ごとの学びと改善が積み重ねられていることを感じました。

寺田漆器店にて輪島塗の制作工程を見学
「寺田漆器店」にて輪島塗の制作工程を見学。ご多忙の中を時間を割いていただきありがとうございました。
崩れた家々や焼け跡の朝市跡
崩れた家々や焼け跡の朝市跡。震災の爪痕を目にし、復旧の道のりを肌で感じました。

「外浦の未来をつくる会」で出会った人々

午後には、「ほくりくみらい基金」さんのご紹介で珠洲市・大谷地区の「外浦の未来をつくる会」の方々にお会いしました。

中心となって活動されている村上ゆりさんは川崎出身。カナダ滞在中にフランス出身のクリエイターであるご主人と出会い、その後奥能登の自然に魅了され、震災の1年半前に珠洲市に拠点を構えられました。地域に移り住んでからは、住民と丁寧に関係を築いてきましたが、震災後は一時的に川崎へ避難。その際、SNSで流れる情報と現地の実情との大きな乖離を痛感し、「ここで出会った人々に恩返しをしよう」と決意。再び珠洲に戻り、代表として活動を続けておられます。

この決断には、人と人の信頼関係の深さが宿っていました。さらに、会には20代のイラストレーター・すずさんも加わり、復興住宅で暮らす方々全員の名前を覚えるほど、住民一人ひとりに寄り添った活動を展開されています。若い世代がこの地域に移住し、人々に希望と笑顔をもたらしている事実は、とても力強いものでした。

外浦の未来をつくる会は、災害支援にとどまらず「地域に根を張り、未来を共につくる」営みそのものを体現していると感じました。

中央が「外浦の未来をつくる会」代表のご夫妻
中央が「外浦の未来をつくる会」代表の村上ゆりさんご夫妻。右から2人目がすずさん。能登でのつながりを力に変え、活動を続けています。
大きな被害の爪痕が今も残る海岸沿いの景観
大きな被害の爪痕が今も残る海岸沿いの景観。自然の猛威と復興の長い道のりを感じさせられました。

おわりに

金沢・能登で出会った皆さんに共通していたのは「明るさ」「笑顔」、そして「力強さ」でした。困難な状況にあっても未来を信じて行動する姿に、人間の可能性とつながりの素晴らしさを改めて感じました。

この訪問記を読んでくださった方々にも、「つながりの力」や「笑顔が持つエネルギー」を少しでも感じ取っていただければ幸いです。

次回のサポサポproject vol.23は、12月12日(金)から14日(日)まで表参道のGallery5610にて開催予定です。皆さまとお会いできるのを楽しみにしています。

サポサポproject 代表
亀井伸二